Defender WORKS V8 "ISLAY"

2015年モデルを以て惜しまれつつも閉じられた、4X4のアイコン。懐かしむ声も多い中、ランドローバーは、メーカーモデル限定品としてではなく、ランドローバーが持つクラシックモデルのリプロダクションを行なうワークスグループの提言として今再び、極少数がリリースされます。

弊社は日本発注元として栄えあるノミネートを拝領いたしました。

今年2023年のワークスモデルは、限定30台(うち110は4台)と当初より発表される、ランドローバーの逸話を伝える75周年を記念する作品となっております。

モデルネームは「ISLAY(アイラ)」

5リッターV8、399馬力に、ZF製8速オートマチックトランスミッションが与えられます。サスペンションやステアリングシステムはクラシックディフェンダーのものをそのまま使用せず、よりコーナリング性能を高めたセッティングで改めて設定されたものとなりますが、ここはワークスグループの得意とするところです。

既に終了した車種のリプロダクションであることから、ディフェンダーの限定車としてはご案内いたしかねるのは従来通りですが、愈々少量の生産であること、またそうした事情からコレクティブにならざるを得ず、お値段はかなりの額になってしまうのも致し方ないと存じます。

しかしながら、お求め頂けます方には恐らくですが相応のメリットも齎されようと感じます。意図せずとも稀少な発生であり、末永く価値が温存されようことは明らかです。

また、たびたび申し述べておりますが、大変な額ではありますが、クラシックディフェンダーが改めて新車で製作され納入されますことに関して、往時新車をお望み乍ら機会を逸した方々への問い掛けとも感じます。

今一度、ご意向をご検討いただく機会、そのものではないでしょうか。

本モデルは完売しておりますが、完成車のキャンセル発生に期待がございます。
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アイラとは、スコットランド(州といいたいところですが、英国では「国」です)で五番目に大きい島の名前で、人口数千名、昔からウィスキーの原酒醸造と観光が中心ですが、標高400mを超す山もある起伏に富んだ地形が曾ては軍用車のテストコースとして用いられることも多かった土地です。
ちなみにスコットランドは、青地を×形の白線で四隅まで仕切る国旗をもつゲール語圏国です。

1947年のある日、戦前戦後に掛けてローバー社の中枢を担い、当時は社長職にあったスペンサー・ベルナウ・ウィルクス氏(写真の人)が、アイラ島で大胆に改造したローバー12型でテスト走行をしていました。丁度氏が新しい自動車メーカーの為に人集めをしていた頃で、呑気そうに見えて実は重大なミッションの最中だったのです。彼もまた、イングランドから遠く離れ、風光明美で休暇も楽しめる隠れ郷的なこの島でドライブをするのを好んだ英国の自動車産業創業族の一員です。島の人々は、そのことを理解していましたし、ウィルクス一族のこともよく知っていましたから、目に付くのですが、ノーズの長い旧型車がばかでかいタイヤをフェンダーやボディを大きく切り取られて履いているその様子を見て、「あんた今度はランド・ローバーでドライブかい?」と言ってきたのです。その言葉をいたく気に入り、新しい会社の社名にそのままもちいてしまいました。
その珍妙な改造クラシックカーに施されたアイデアは、当時大量に払い下げられ農村で利用されていたウィリスジープやフォードGPWのサイズへ向けて、伝説の四十八日開発によってモディファイされ、スペンサー氏の弟モウリス・ウィルクス氏が社長に就任した「ランド・ローバー」にて翌年、モデルHUE166、著名なランドローバーシリーズI(ワン)としてデヴューすることになります。

このエピソードは、何れ語られるだろうが、という伏線が付けらてはいましたが、おそらく今回、発生75周年を記したこの限定モデル発表まで公式に表わされることはありませんでした。現在は2008年創業のジャガーランドローバーがこのブランドを行使しており、歴史は企業実態的に閉じておりますので、現在の同ブランドにおいて記念されることはありません。これが、75周年記念モデルであり、遂に原点に回帰いたしました。でも、それでも、活字で何処かに印刷されて読めはしません。読ませないつもり、まだ内緒。



写真はアイラ島の西の外れの海岸で撮影されたものだと思います。筆者には懐かしいです。こんな感じの海岸の沖をヨットで通りましたね。四十年近く経つものですが。
閑話休題、左は御存じHUE166、その両目が見つめるのが末の曾孫ともいうべき今回の限定モデル「アイラ」です。


出来る限りHUE166をフューチャー。七十五年を誇りたい、現在もランドローバーモデルを扱うメンバーがワークスチームを以て微量乍ら世におくります。
是非、お手許でご保存いただきたいと思います。


公式発表と言って良いのでしょう。敬意を込めて、あえて原文をタイプいたしません。公式のカタログにさえ植字されていないのですから。下手な翻訳で誤魔化させて下さい。
「スペンサー・ウィルクスが大幅に改造されたローバー12をアイラ島で運転しているとき、ランド・ローバーでドライブかいと訊ねられ、それを命名した」
勝手乍ら、感激してしまうプレートです。何処にも書かせなかった、おやつのパブか何処かでの雑談に挙がった、この禁断の逸話がこんな、ご覧の通り、コップに隠れてしまうような小さなところに改めて、しかも意図的に句読点を除かれた碑文的文体で示されているのですから。ちなみにこの原本を所有出来る人は三十名だけ。羨ましい限りです。


昨年のワークスモデルもそうでしたが、ガソリンエンジンを用いたい理由は、HUE166にあるのです。あとから訊いたことですけれども、後にヂーゼルエンジンも採用しましたが、それは必要に迫られてのことで、元々はガソリンエンジンでデヴューしたので。回帰させたい意欲が、この5リッターを詰め込ませたのでしょう。
お問い合せに躊躇は無用です

ちなみに、JLRのワークスがいつまでもこのような具体的には儲からないことに手を染め続けることは、余り期待しない方がいいようです。何処かの潮時を探っていながら、今年を待っていただけのことなのかも知れません。
七十五年の間には、紆余曲折、七転八倒があり、という思いを伝えたい情熱が生んだ少数製造です。


このモデルには、アイラ島へのリスペクションも反映されます。
センターコンソールボックスをめくってみないと分からないのですが、特産のウィスキーの樽がモチーフされた、プレートに、樽のオーク材の切り抜きを取り囲むように樽の面を象ったトレーが填められています。
樽材はキルコマン醸造所のもので、スペンサー・ウィルクス氏の孫にあたるキャシー・ウィルス氏と夫アンソニー・ウィルス氏によって2005年に同島に創業しました。この希有な縁が本作の発想を導いたのです。
ちなみに同醸造所から「639」と名付けられたウィスキーが、本作オーナーへ贈られます。
639は、このエディションのモデルナンバーです。


後部座席床面は、オークのベニヤ材を用いており、センターコンソールのカップホルダーの底にはさり気なくウィスキー樽の材木にそれを彷佛とさせるレタリングを施し填められています。
ひっそりと、栄えある社名を呉れた島へ、ご恩返しがされているのです。